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2005年11月11日 (金)

内田善美さん

20年ほど前に、筆を折って、僕らの前から姿を消した漫画家がいる。
内田善美さん。
僕が、もっとも好きな漫画家だ。

この人の作品は、デヴュー作を、偶然『りぼん』で読んで以来、ぜんぶ読んでいる。
単行本も、全部持っているはずだ。
あまり物を収集しない僕が、唯一持っていたいと思う本だ。

すばらしい日本の漫画作家のなかでも、最高のレベルまで到達した作家の一人だろう。
そんな人が、ふいに姿を消して(作品を書かなくなって)、もう二十年くらいたってしまった。
しかし、作品はちっとも古びていない。
今読んでも、すばらしい。

昨日、ふと思い立って、『星の時計のLiddele』を読み返した。IMGP2772
はじめてこの作品を読んだときのことが、まざまざとよみがえった。
一年以上に渡る連載中、ぼくは雑誌から、この作品だけを切り取って、一冊の本をつくったりしていた。
それほどお気に入りだったのだ。
漫画の本を切り抜いたなんて、後にも先にも、このときだけ。

美しい人物。
詩的な会話。
ロマンス。
幸せな時間をすごせた。

一冊のコミックブックで、幸せになれるなんて、なんていい時代だったんだろう。

『星の時計のLiddele』の主人公ヒューは、夢の中に消えて行った。
そして、作家の内田さんも、物語を残して消えた。

いや、消えたわけではない。
ただ、作品を出さなくなっただけなのに、それを、読者である僕たちが、かってに消えたとか言っているだけだ。
失礼極まりないことを言ってもうしわけありません、内田さん。

最高の漫画を書くことができた内田さんは、今も、自分の物語を生きているにちがいない。
この世界のどこかで。

ありがとう、僕は、あなたに、いくつもの幸せな時間をもらいました。

僕も、この世界のどこかで誰かが、ありがとうと言ってくれるような物語作家になれるかなぁ。

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コメント

ごめんなさい、間違えて2度も同じトラックバックを送ってしまった者です。
ご迷惑をおかけして本当に申しわけありません。
お手数でも重複は削除くださいますようお願いいたします。

投稿: 屋上者 | 2006年1月25日 (水) 02時49分

本日、社員と話している時、私が20代の前半少女マンガを読みふけった話になって、20年以上忘れていた記憶がふと甦り、必死に検索したらここを発見。内田善美と言う希有の漫画家とリアルタイムに過ごす事の出来た幸せを、同じようにかみしめていた方がいらっしゃる事に痛く感動しております。萩尾望都に引かれて少女マンガを読み始め、りぼん、ぶーけ等々内田善美の耽美的な世界をファイリングしていった日々。30代に国外逃亡した時あれは何処へやってしまったんだっけ?・・・なんて、朧気な記憶と鮮明な記憶にもんもんとしてしている所。なんとか探し出して娘に見せてあげなきゃ!デスノートだけがマンガじゃ無いんだって。(見つかるかな・・・)

投稿: sho | 2006年11月27日 (月) 21時55分

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» 内田善美、幻の『人魚夢幻の秋のいろ』 [屋上者の島へ]
内田善美、大島弓子、萩尾望都の漫画を十代の頃に熱愛していた。 あの頃の十代の女の子たちは、今の十代が読むのとは少し違ったふうに少女漫画を読んでいたように思う。なんというか、もっと切実に、もっとまっすぐに。当時、音楽や映画や小説やアートが与えてくれないものを、少女漫画は女の子たちに与えてくれたような気がする。 内田善美の作品は『空の色ににている』『ひぐらしの森』『星の時計のLiddell』の三大傑作を筆頭にみんな読んだのだけれど、雑誌に掲載された物語のなかで1つだけ、単行本に収録されていない幻... [続きを読む]

受信: 2006年1月25日 (水) 02時35分

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