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2011年11月16日 (水)

二日で本番やりました

シアターミラクル提携企画『二日で本番』を振り返って。

 先日の11月13日14日の二日間新宿シアターミラクルにおいて、『二日で本番』という企画のワークショップ講師とショーの演出を担当しました。

 この企画は、劇場を一般の人にもっと身近なものにするというテーマで、二日間のワークショップで最後に劇場公演をするというもの。
「えー、そんなのできるのか!?」と依頼を受けたときに思ったが、これもチャレンジと引き受けることにしました。
 企画は、多摩美の生徒で、ダンス界の新星の木皮成。
 木皮もワークショップに参加する予定になっていたのだが、彼自身が他の現場で演出助手の仕事が入ってしまい、企画者不在のままワークショップをすることになってしまったのだった。
 しかし制作関係は、多摩美出身の星さんや、現役多摩美生たちが多数協力してくれたので、とどこおりなく運営することができました。

 ワークショップの参加者は12名。そのうち演劇経験のない人が4名。他も劇団員から、声優さん、映像系の俳優、学生など、多様で、年齢も下は17歳から上は48歳までという幅広さでした。
 それぞれほとんどが初対面の人たちと、二日間、稽古時間にすれば約12時間で本番に突入しなければなりません。
 脚本家の仕事では、12時間後にテレビドラマの脚本を一本完成させてくださいと言われたのと同じ感じです。
 いちおう脚本家としてはキャリアをつんでいるので、そういうギリギリの状況に追い込まれたことは何度もあるので、なんとかしてやると闘志がわきました。

 ワークショップをはじめる前は、台本を使ってそれを稽古して発表にまでもっていこうと漠然と考えていたのですが、この参加者たちを見て、台本を使うのはやめることにしました。
  初心者の人たちに、いきなり台本をつかっての演技指導をするのは無理だと思ったからです。
 まずは演技することへの抵抗感(恐怖感)を取り除くことから始めることにしました。

 初日は、インプロ(即興)の練習からはじめました。
 まずはお互いの名前を憶えて、相手との距離を無くすことからです。
 名前を憶えるゲームや、単純に連想するゲームなど、楽しいインプロのゲームをやりながら参加者の緊張をほぐしていきます。
 初心者の人たちが人前で表現することにたいする恐怖心を無くせるように、『失敗してもいいんだ』『失敗することが大事なんだ』『だめだったらさっさとやり直していいんだ』ということを、身体で感じることができるようなワークを中心に進めていきました。

 参加者たちの恐怖心が取れてきたら、実際の即興演技に入っていきます。
 物語のシーンを作るには、どうすればいいのかを丁寧に指導していきました。
 するとみるみる面白いシーンができるようになってきました。
 ここまで約4時間かかりました。
 初日の残り2時間は、5、6人のチームに別れて、インプロのロングフォームを試みました。
 キーワードから、連想するキャラクターをつくって、それらの人物の関係性をつくってストーリーを編んでいくというタイプのものです。
 演出の僕が、シーンの最中にいろいろなサポート的な言葉を入れながら、ロングフォームをやっていきます。
 このなかで、様々なシーンが生まれました。
 参加者の人たちも、シーン作りを楽しんでくれたようで、終了後に感想を聞くとみんな口々に『楽しかった』と言ってくれました。
 これなら二日目も行けると、僕はこのとき確信したのでした。

 本番をやる二日目も、稽古時間は実質五時間くらいしかありません。
 しかもこの日から参加の俳優も、一人います。
 ウォーミングアップは初日と同じように、演じるための恐怖心を取り除くためのものを中心にやりました。

 この時点で、本番のショーは、作品一本と即興のロングフォームのシーン二本の三本立てでやることにしました。
 そのためのショーの構成を大急ぎで作り、照明と音響のスタッフと演出助手と打ち合わせ。
 このスタッフたちには、本当に助けられました。

 参加者たちを二つのチームに分けて、ショーの後半の即興ロングフォーム対決をすることにしました。
 チーム名は、参加者たちに決めてもらいます。『JKB5』と『きばつピアス』が編成されました。
 両方の選抜メンバーを中心に、全員が参加して、オープニングシーンの一本目を作りはじめます。

 初日にやったのと同じように、即興をしながらシーンを作っていきます。
 一時間半をかけて、三十分の芝居ができあがりました。
 芝居のタイトルは『ステイション』とつけました。
 駅で出逢った人たちのストーリーです。
 仕事をリストラされ絶望した中年おじさんが、駅で出逢った人たちとの触れ合いを通じて、自殺を思い止まり、新しい人生を歩きだすことを決意するというもの。
 このできあがったシーンを、本番で再現するのです。
 こまかい段取りと、照明と音響のタイミングを打ち合わせして、稽古は終了です。
 二本目三本目のシーンは、チームに別れて、完全即興でやります。
 参加者の人たちに、ちょっとだけ緊張感が走るのがわかりました。

 やり終わってからの反省ですが、もう一度本番前に緊張感を取り除くためのワークをやればよかったなと思ってます。
 自分が、やれるという確信を持ったものだから、この時点ですこし油断してしまいました。
 はじめて即興のしかもロングフォームをやる人たちの気持ちを、もう少し僕が感じてやれればよかったと、深く反省している次第です。

 本番を終えての感想ですが。
 一言でいうなら『面白かった!』。
 お客さんも予想以上の三十名近くに入っていただきました。

 ショーは、一本目の『ステイション』は、役者の一人が途中できっかけのセリフを忘れるというハプニングはあったものの、なんとか他の役者がフォローして、お客さんたちには気づかれることもなく進みました。
 二本目の『JKB5』のシーンでは、男子高校を舞台にした先生と生徒たちとの交流が面白く演じられました。
 三本目の『きばつピアス』のシーンは、病院を舞台にしたシーンが始まったのですが、途中でドタバタし混乱してしまったために、強制終了のサイレンがなりだして暗転するという結末になりました。
 しかしこの強制終了も、逆にお客さんたちの笑いを生む要素になり、ショー全体としては、とてもハッピーで暖かい雰囲気のものになったと思います。

 これも反省点ですが、アンケートを取らなかったのが悔やまれます。
 ショーを作ることに集中してしまったために、そこまで気が回らなかったのです。
 お客さんたちの感想は、次の企画に向けての貴重な資料になったのではないかと思います。

 二日間で、舞台をつくるという無謀とも思える企画でしたが、とても有意義な体験になりました。

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