« クラーク記念高校の芝居『カグヤ』 | トップページ | 今年の活動予定その1 »

2011年11月29日 (火)

高校生がつくったインプロノシーン

2011/11/28
 東放学園高等専修学校の卒公メンバーでのインプロの稽古場で、すごくいいシーンが生まれたので、記憶をもとにして書き残しておきます。
 録音か録画をしておけば良かったと思ったほど、大笑いして、最後は涙が出るほど感動した良いシーンでした。

 5人のプレーヤーに与えられたタイトルは、『葬儀場』。(このタイトルは、見ている他のメンバーから出たもの)
 タイトルを聞いて、最初の一分ほどは、他のメンバーによる場所作りの即興がはじまります。
 葬儀場での、さまざまな人間模様が始まりました。
  お焼香している人。受け付けをしている人。お茶を飲んでいる人。いろんな人がいます。その短い間に、このシーンを演じるメンバーたちは自分が演じるキャラクターを考えて、思いついた者から前に出て、それを語り始めます。
 まずしのぶが前にでました。
「坂本のりこ、48歳。ふだんはスーパーでパートの仕事をしています。今日はダンナの葬儀でここにきています。元気な人でしたが、突然倒れて、帰らぬ人になってしまいました。たくさんの人が、あの人とお別れにきてくださってます。あの人が、こんなにたくさんの人たちに慕われていたなんて、あたしはちっとも知りませんでした」
 次に、るみがでて、
「坂本太郎、58歳です。どうやら死んでしまったみたいです。記憶があいまいで、いったいどうしてこんなことになったのか、さっぱりわからないんですが、気がついたらここにいて、上から自分の体を見下ろしていて、妻がその体にしがみついてます。あー、死ぬんだったら、いろいろいいたいことがあったのになぁ」
 と、死んでしまった旦那になりました。
 次に前にでたのは、ゆか。
「あたしは、田中ともこ、29歳。実は太郎さんと不倫してました。悪いこととは思いながら、太郎さんのこと愛しちゃったんですよねー。それなのに太郎さんたら、突然死んじゃって。あたし、こんなところに来る立場じゃないってわかってはいるんですけど、最後に一度だけで太郎さんに、お別れがいいたくて、きちゃいました」
 一瞬にして、こんな人間関係を作り出した彼女たちのアイディアに僕は舌をまいてしまいました。
 旦那さんを亡くした奥さんと、幽霊になった旦那さん、そしてその不倫相手。
 これからどんなドラマが展開するのか、わくわくする登場人物たちです。
 このシーンには、五人が出ることになっています。さぁ、あとの二人はどんなキャラクターで加わってくるのか、期待はふくらみます。
 このとき、プレーヤーたちにとっては、ギリギリの状況が続いています。
 このあとどうなるかなんて考えていては、その場の状況に対応できないので、とにかく思いついたことをやるしかありません。
 次に前に出たコウタは、意外なキャラクターを語り始めました。
「僕は、法隆寺徳之助、霊能力者だ。ちかごろこのあたりに霊がうろついているのを感じるんだ。それを調べるために、ここにやってきた。匂うぞ、あやしい霊の匂いが」
 なんと霊を見つけては、それを浄化する力のあるという、霊能力者になったのです。
 これには驚きました。さすがマンガアニメになれしたしんだ世代です。
 五人目のマリンは、髪の毛をちょっと不気味な感じにたらしながら前に出て、
「サチコです。あたし、この場所に五十年くらい、ずっーといます。ウフフフフ。みんなあたしのこと、見えないみたい。ウフフフ」
 と、不気味な雰囲気で語りはじめました。なんとこの斎場に居ついている小さないたずら好きの子供の霊になったのです。
 これにも驚きました。このキャラクターを思いついたのもすごいと思うんですが、いたずら好きの子供の霊を演じるという遊び心がいいじゃないですか。
 さぁ、登場人物が五人でそろいました。これからどんな物語が生まれるのか、期待感はさらにたかまります。

 シーン1
 サチコに、太郎が近寄っていきます。
「あー、おれは本当に死んでしまったのか。まだ、妻に言いたいことがあったはずなのに……」
「おじさん、しんじゃったの?」
「えっ、おれが見えるのか、きみには」
 と、サチコと太郎のシーンがはじまりました。
 サチコは自分がここにずっといるということを伝え、死んでもこの世にまだ悔いがある人は、幽霊となってさまようのだということを太郎に教えます。
「あー、おれはどうしたら、いいんだー」
 と、太郎はなやみます。
 サチコは、太郎にとって都合の悪い人が近づいてきている気がすると告げるのだった。

 葬儀場に近づいてきていたのは、太郎の不倫相手のともこです。
「あれは、ともこ。そうだ、おれはあの子とまちがった関係をもってしまったんだった。のりこと、ともこが会ってしまったら、大変なことになる。それだけは、なんとかとめなきゃ」
 と、あわてる太郎です。

 シーン2
 霊能力者の法隆寺が動きはじめます。
「このあたりに霊の匂いがする……」
 シーン1を演じていた、サチコと太郎はすっと後ろに下がります。
 それと入れ代わるように、のりこが前に出ました。
「お焼香に来てくださったのですね。どうぞ、太郎の顔を見てあげてください」
 と、喪主と不思議な訪問者のシーンが始まりました。
「このたびは、お悔やみもうしあげます……」
「太郎は、会社ではどんなふうだったんですか、あたしにはなんにも話してくれなかったものですから」
「いえ、わたくしはご主人とは知り合いではなかったのですが……このあたりに、霊の匂いがするのです」
「えっ、では、まだ太郎が、このあたりにいるのですか?」
「いえ、さっきまでは何かいた感じがするのですが、今は感じません……」
 のりこは、霊能力者にもし死んだ太郎の霊がいるのなら、もう一度話をしたいと言うのでした。
 そこにサチコに連れられた太郎の霊がやってきます。
 悲しんでいる奥さんに話をしたくても、声を伝えることのできない太郎と、奥さんのかみあわない会話のシーンが面白く展開します。
 しかし霊能力者の法隆寺が、なにかがいることに気づくので、ヤバイとなって太郎とサチコは逃げるように部屋から出て行ってしまいます。

 シーン3
 隣の部屋には葬儀場で迷った太郎の不倫相手のともこがいます。
「来てはいけないと思いながらも、がまんできずに来てしまった・・・太郎さんと一目あってお別れしたいのに、いったいどこなのかしら?」
 そこに太郎とサチコの幽霊コンビがやってきます。
 なんとかサチコを止めようと必死になる太郎は、サチコから霊力の発揮しかたを聞いて実行しようとするのですが、なかなかうまくいきません。
 この霊力とは、ハーッと気合いを発して、相手の足をとめてしまうというもの。(カメハメハみたいなもんです。おいつめられて、こういうものを思いつく高校生の発想力に笑いながら感心しました)
 太郎が失敗ばかりするのを見かねて、サチコが霊力を発射して、ともこをひっくり返してしまいます。
 転んでしまったともこには、いったい何が起きているのかわかりません。(このあたり、まるで良くできたスラップスティックコメディのようでした)
 そこに悪い霊の存在を感じた、霊能力者の法隆寺がやってきます。
 法隆寺には、サチコと太郎がうすく見えるらしく、悪霊を追い払おうとするのだが、ともこにはいったい何が起きているのかわかりません。
 法隆寺に倒れてけがした責任をとれと言い出すしまつ。
 サチコと太郎は、霊能力者に昇天させられては困るので、その場を逃げ出していくのでした。

 シーン4
 太郎の体が安置されている部屋では、妻ののりこが太郎の体にすがって泣いています。
「太郎さん、あなたのためにたくさんの人がおくやみにきてくだいましたよ。家では何にもしない人だったけど、仕事場ではりっぱだったのね。でも、あたしは、あなたともっと一緒にいたかった」
 そんなのりこを逃げてきた太郎とサチコが見つめます。
「のりこ、おまえというものがありながら、一時の気の迷いで、浮気してしまって、すまなかった。ほんとうにごめんな」
 と、聞こえない相手にむかって謝る太郎です。
 そこに霊能力者とともこが追ってきます。
 ともこは、のりこに太郎とはどんなご関係でしたの? と聞かれてしどろもどろになります。
 そんな二人の状況に、幽霊の太郎は気が気ではありません。二人の間にはいって、おろおろするのですが、二人には太郎の姿は見えないのです。(まさにコメディです)
 法隆寺から、この場に太郎の霊がいるということを聞いたのりこは、なんとか太郎と話をしたいと願います。
 しかし、自分は迷った霊を天国に送るのが仕事で、そういう都合のいいことはできないと言うビジネスライクな霊能力者なのでした。
 このままでは浮気相手とのことなど、自分の本当の気持ちが伝わらないと焦った太郎は、なんとか方法はないのかとサチコに聞きます。
 するとサチコは、「まだ肉体がこの世にあるあなたなら、体に飛び込めばなんとかなるかもしれない」と教えるのでした。
「わかった、やってみるよ」
 と、太郎は思い切って、そこに横たわる自分の体めがけてダイブする。
 太郎の霊魂は、太郎の体にもどることに成功するのです。(このあたりのアクションもばかばかしくて、大胆で大笑いしてしまいました)

 一時的に生き返った太郎が、むっくりと起き上がります。
 驚く妻と愛人に、太郎は心から謝ります。
「嘘をついてわるかった。ともこ、きみにも本当に悪いことをした。もう謝ることしかできないが、どうかわたしを許してくれ」
 そんな太郎に、妻は意外な返事をします。
 あなたが浮気していること、うすうすは感じていた。だけど、あなたがそんな気持ちになったのには、あなたに甘えていた自分にも責任が少しはあったのかもしれない。あなたに寂しい思いをさせた、あたしもわるかったのと。
 それを聞いていたサチコが、一同の前に姿を現します。
 驚く一同に、サチコは驚くべき事実を告げるのです。
「わたしはサチコ。本当は、あなたたちの間に生まれることになっていた、女の子。ここでもう一度、あえるまで、待っていたんです」
 太郎と妻は驚きます。
「サチコ、じゃあおまえは、あのときの・・・」
 二人には過去に、生まれなかった子供がいたのです。
 死産だった子供が。
「そうです。ずっと一人で寂しかった。でも、もう寂しくない。やっと会えたから」
 この衝撃の事実に、太郎も妻もそして、そこにいる全員が驚いていました。
 生まれることのなかった小さな魂が、何十年も親に会えるのを待っていて、それが父親の死でかなったのです。悲劇なのに、良かったと思える、不思議な状況。
 (演技しながら、気持ちがあふれて、太郎役のるみはもう涙ぐんでいます。サチコ役のまりんも必死に涙をこらえてます。みている僕たちも、鳥肌がたつほど感動していました。)

 サチコにうながされて、太郎は旅立つ決意をします。
 霊能力者に頼んで、太郎とサチコはあの世へと昇天していくのでした。
「さよなら、のりこ、ともこ・・・」
「さよなら、母さん」
 それを見送るのりこ、ともこ、法隆寺。

 太郎と不倫したことを、ともこはのりこに謝りますが、のりこはともこを許し、また会いにきてくださいとまで言います。自分の愛した太郎を好きになってくれてありがとうと。
 そんなのりこに、法隆寺が一言。
「いい奥さんだ」
 これがこの物語の締めの言葉となりました。

 演技を終えたるみとまりんが、妻と愛人が仲直りしているシーンを見ながら泣いていました。
 そしてすべてを目撃した僕たちは、しばし呆然としたのち、拍手したのでした。

 全体の時間は約26分。
 すべて即興で、見事なコメディスケッチができあがかったのでした。

 今回は、この葬儀場のシーンの他にも、飛行場のシーンと、秋葉原のシーンが演じられたのですが、その両方とも面白く、ここに書き起こしたくなるような出来でした。
 高校生たちと約二ヶ月インプロの練習をしてきて、彼らが着実に力をつけてきているのを実感しています。

|

« クラーク記念高校の芝居『カグヤ』 | トップページ | 今年の活動予定その1 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/100879/53362890

この記事へのトラックバック一覧です: 高校生がつくったインプロノシーン:

« クラーク記念高校の芝居『カグヤ』 | トップページ | 今年の活動予定その1 »